先日、日本公認心理師学会で『公認心理師はいかに自分のバージョンアップをはかるのか』というテーマで発表したことをまとめようと思って、一度は記事にしてみたけど個人的に気に入らず、ボツ原稿となりまして(笑)。
でも何かの形にはしたいと思って。うむむ、と考えているうちに、ああそうか、ここは自分の責任で書く場なので、学会発表した内容にこだわらず、自分の思った通りに内から湧いてくることを書きたいように書けばいいのか、と気づきました。
ということで、僕が心理学を学んできてカウンセラーになって、今に至るまでの道のり(?)を、これから思うままに書いていこうと思います。多分長くなるのでちょっとずつ書きますね。
お役立ち情報とかは全くない(汗)ので、そのつもりで読んでください。
さてさて、話をまず大学受験に遡ってみることにする。
え、そこから(笑)?
そしていつ?
そうだな。スピッツが『ロビンソン』をヒットさせブレイクしたその年に、大学受験に失敗した僕は浪人生となった。
桜の舞う4月、名古屋の某予備校の5階の席に座っていた。
知り合いが誰もいないその部屋で、とにかく花粉症の症状が今よりも辛くて、鼻水が出まくるので鼻をかみ過ぎて鼻の下がガビガビになって、いっそ鼻をもいで洗ってやろうかと、本気で思った。書くまでもないが、当然のごとく目も痒みで大分やられていた。
何で大学に行くのか。
あまりその意味もよく分かっておらず。
高校生の時、数学がかろうじて好きだったから、経済学部?経営学部?とか考えていたけど、明確な目標だったわけでもなく。
何がやりたいんだか、何を学びたいんだか。
どう動けばいいのか、これからどこに向かえばいいのか。
誰も答えを知らない。教えてなどくれない。
現役で大学に受かった友人からは時折連絡が来た。高3の時に付き合っていた彼女からも、時々手紙が届いた。胸の奥が疼いて、切ないような懐かしいような気持ちになる。
皆、僕には気を遣ってくれる。ありがたい。
でも、隠していても『大学って楽しい』ってのが、漏れ出て伝わってくる。
いいなー。
今、僕には何にもない。
空っぽ。
朝、名古屋駅南口を出て、見上げた空。澄み渡った痛いくらいの青。
ああ、今日も授業が詰まっている。
ある時、予備校の先生がふと言った。「今の君たちにはここに何が入る?」
『人生は〇〇の連続である』
この〇〇には何が入っても良いらしい。
言葉を入れてみると、その時の自分の状態が分かるというもの。
その先生は、「僕は『選択』という言葉が入るかな」と言った。
ふーん、なるほど。そうなんだ。
僕にはサラッと『苦難』という言葉が頭に浮かんでいた。暗い(笑)。
それでも春から夏へ、時間は容赦なく過ぎる。時折、模擬試験を受ける。
波はあるけれど、そこそこの成績。
でも、僕には何もない。
将来、どこに向かっていくのだろう。
当時、ロビンソンが僕の頭の中ではよく流れていた。
『新しい季節は なぜかせつない日々で 河原の道を自転車で 走る君を追いかけた』
自分の事すらよく分からないや。
このままやりたいことも見つからず、何となく大学に行って、何となく働くんだろうか。
人間て何だろうか。何のために生きているんだろうか。
結局、人は死ぬじゃないか。
バカバカしい。頑張る先も見えてないのに走ってる。
時間や周りに流されて。
こうやって人は埋もれていくのかもしれないな・・。
ただただ空虚感。
予備校の帰りの電車から見た田んぼの風景。
風になびく稲穂。遠くの山々。穏やかに流れる川。豊かな緑。
その時だけは、僕は癒された。
そうして、気づけば名古屋は蒸し暑い夏に。
予備校の冷えた部屋に籠り、大学の学部一覧のようなリストを眺めていたら、見たことのない学科があることに気づいた。
『心理学科?・・・心理学?』。
ん?なんだ!?
シンリガク?
心理・・学!?
心を・・・学ぶ??
脳内にビビッと電気が走る。
苦しくて、先が見えなくて。
どう生きればいいのか、何を目指せばいいのか。
じわじわと沼にハマっていくような日々。
でも。
何かが『カチッ』とはまったような。
暗いトンネルの先に光が見えたような。
とにかく説明のつかない高揚した感じ。
真夏の夜。夢中になって、それを調べた。
どうやら心理学という学問があって、その先に臨床心理士という職業があるらしいと知る。
『リンショウ・・・シンリシ!?』。
心という謎。
自分のことをもっと知りたくて、探求したくて。
何かに飢えていた。
どこを目指せばいいのか分からないから、動きたくても動き出せない。
そうしているうちに、動くことすら嫌になって。
でも、もしかしたら見つけたのかもしれない。
大切なモノを。
これから探求していくモノを。
真夏の夜、僕は進路をロックオンした。
季節は秋から冬へ。
スイッチが入った僕は、人生で最も勉強した時期を過ごす。
今じゃとても出来ない。
途中、スランプの時期もあった。
何だか焦りが先に立って、熱を出したこともあった。
成績の伸びが鈍る。下手をすると点数が下がる。
人は弱い。
どれだけ意志を強く持ったとして、すぐにへこたれる。
歯を食いしばって勉強をする。
どうやら心理学は人気らしく、同じ大学の他の学科と比べ、心理学科は偏差値が高くなるのだ。
そかー、ま、いいさいいさ。
どうせ人生は『苦難』の連続だ。
知ってる知ってるそんなの、はははは。
と訳の分からない考えで自分の不安を紛らわせる。
新しい年を迎える。
苦手だった物理を徹底的に鍛え、センター試験(今で言う大学入学共通テスト)では奇跡が起きる。
得意科目の地理は順調。
英語、数学、国語もまずまずだ。
予備校の先生からは、「志望大学に受かりそうな人に前もって内々にお願いしているんだけど」と打診がきた。
受かったら新聞の予備校の広告に顔写真を掲載させてもらっても良いか?とのこと。
もちろんOKだ。
受かるつもりだし、そのつもりでやってる。
いざ、二次試験(個別試験)。
そして、受験というのは水物。
どれだけ準備をしても、想定外の事態は起きる。
望んだ結果にはならなかった。
人にはそれぞれ夢があって。
それでも人生は『苦難』の連続だ。
全部が全部、叶うわけじゃない。
でも、ぶち当たった壁の前で嘆くのは、もうやめだ。
実際のところ、大学がどこか何て、どうでもいい。
本当に大切なのは、自分がどうあるか。
何を見つけ、何を残し、何を伝えていくか、だ。
僕は目指す。この道の先を。
誰かが悩んで、先のことが見えなくなったとき、そんな時にどうしたら良いのか。
その答えが、心理学にはある。
かもしれない・・。
あの『苦難』の中にいた時に、欲しかったもの。
それを誰かにあげられるような、そんな人になりたい。
この気持ち、無くさないように。
決して無くさないように。
僕は弱い。とても弱い。
すぐに逃げたくなる。
でも、僕には使命がある。もう決めたんだ。
だから強い。
まだ自信はないけど、そうありたい。
3月、住み慣れた故郷を離れる。
もうここには戻らないかもしれない、とどこかで思う。
旅立ち。
夢。
未来。
高速道路を降りて、しばらくすると富士山が見えてくる。
そのまま富士山の見える方角に向かって走る。大きいな・・。
ああ、自分の存在って小さいんだな・・。
そうかそうか。
僕はまだ人生のスタートラインにも立っていないんだ。
ただただワクワクして、希望に燃えてはいるけれど。
まだ力なんてないし、親の脛をかじっていかなければ生きていけないし、先の事なんて分からないけど、いつかは自分で道を創るんだ。
4月、思いだけは力強く、着慣れていないスーツを着た僕は、静岡にいた。
(2話に続く・・何か、長くなりそう・笑)